Keyword A 非市場

Keyword A : 非市場

農村の経済は、どのような仕組みで動いているのだろうか。ひとつは、ミクロ経済学の教科書で学ぶような、価格をシグナルとする「市場」であろう。しかし市場だけでは経済は成り立たない。現実には、市場の働きを支える様々な非市場の仕組みが具体的に存在する。政治機構、法、行政機構、司法機構などのフォーマルな仕組み、また慣行、慣習、文化といったインフォーマルな仕組みもある。これらの非市場の仕組みの中に埋め込まれて、市場は具体的に機能しているといえる。それでは、非市場の仕組みはどのように読み解いたらよいのだろうか。

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開発途上国の非市場の仕組みを、どのように考えるか

asami-imgS02この仕組みは「制度」といわれている。特に、開発途上国の農村は、形式的には市場が未成熟な場合が多いのであるが、それでも人々は上手に経済取引を行っている。それは、非市場の仕組み、つまり制度の中で市場を利用しているからではないだろうか。そしてその制度が合理的に設計されているから、取引がスムーズに行われるのではないだろうか。中国、日本、東南アジアなどアジアの農村を対象に、現地での農村調査をもとに、これまで光を浴びてこなかったこの制度の仕組みを、経済学をベースとして探っている。

インフォーマルな仕組みを読み解く

asami-imgS03文化などインフォーマルな仕組みが、様々な慣行や商習慣などの形で、市場の機能を支えていることは間違いない。それでは、文化自体は仕組みとして合理的に設計されたものなのだろうか。文化はどのような仕組みで市場を支えているのだろうか。文化として、儒教による中国農村の贈与関係主義、ムラ社会での相互扶助規範による日本農村のユイ、テツダイ、ムラシゴト、ジャワ農村の共同作業慣行などを対象として、これまで文化人類学や社会学が扱ってきた領域を、経済学の視点から、その中に合理性が埋め込まれた仕組みであることを明らかにしている。

フォーマルな仕組みを読み解く

asami-imgS04フォーマルな政治機構、法、行政機構も、市場の機能を支えていることは間違いない。それぞれは、経済の仕組みとして合理的に設計されたものなのだろうか。政治機構として、社会主義中国の農村で、農業経営体制の基盤となっている「双層経営体制」がある。これは、社会主義政治の求める集団と、個別農家が共同で農業経営を運営する仕組みである。法として、その中国での農地の財産権の法制度の設計の合理性を検討している。社会主義中国では、農地には所有権は認められず、農民には利用権だけが設定されている。これらは、合理的な設計となっているのだろうか。日本には、完備された農家への統御機構である行政機構や地域農業組織がある。それぞれの制度の設計が合理的かどうかを、経済学の視点から検討している。

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