Keyword F フードシステム

Keyword F : フードシステム

tsujimura-imgS01私たちの命を育む、この上なく大切な「食」。それを育む「農」も、この上なく大切なはずですが、現代は「食」と「農」が分断され、消費者の「農」への関心が薄れてしまっているようにみえます。毎日、体内に取り込む「食」を、誰がどのように生産、加工し、どのように取引しているのか。どのような路を通って私たちの食卓へ至るのか、知りたいと思わないのは、おかしなことではないでしょうか。

フードシステムとは、「食料農水産物が生産され、消費者にわたるまでの食料・食品の流れ」「食料品の生産・供給、消費の流れにそった、それらをめぐる諸要素と諸産業の相互依存的な関係の連鎖」(新山陽子『牛肉のフードシステム』日本経済評論社)と定義されております。

上記のように、遠く離れてしまった「農」と「食」。それらの間にある食品産業(食品製造業者、食品流通業者、外食産業者)を含め、生産から消費までの全体を、連鎖した1つのシステムとしてとらえないと、食料や農業をめぐる様々な問題を理解できません。「農」と「食」をつなぐための分析概念・枠組みがフードシステムなのです。

tsujimura-imgS02たとえば、今朝飲んだキリマンジャロ・コーヒーをたどっていくと、1ヶ月前に日本で焙煎されたコーヒーであり、東部アフリカ・タンザニアを4ヶ月前に出航したことがわかります。さらに川上へさかのぼると、8ヶ月前に北部・キリマンジャロ山中の貧しい農村において、家族が総出で収穫したコーヒーであることがわかります。

フードシステム分析によって、生産から消費に至るまでに6ヶ所の価格決めの場所があり、それぞれの場所においてどのような仕組みで価格が決まるかわかった時、そして農家経済経営分析もふまえて、安価なコーヒーを求める私たちの消費が、産地における経営の困難さ、農家の貧しさ、森林破壊につながっているとわかった時、皆さんの買い物の仕方が変わるでしょうか。

tsujimura-imgS03たとえば、夕食で食べたご飯は、1週間前に生活協同組合で買い物されたものであり、たどっていくと、半年前に山形で稲刈りされたコメだとわかります。

フードシステム分析によって、さらにその半年前から、生産者と農業協同組合、生活協同組合と消費者という、生産から消費までのすべての主体の代表が集まって、持続的に生産し続けられるよう、持続的に消費し続けられるよう、何度も価格決めの交渉を行った上で実現している価格であることがわかった時、そして消費者代表の要望に応じて、できる限り農薬の使用を減らして生産されたコメであることがわかった時、皆さんの買い物の仕方が変わるでしょうか。

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